トレーニング法

ペアレントトレーニング

 家の中で、あるいは外出先で、子どもが「してほしくない行動」をとる場面に必ず遭遇します。そんな時、つい感情的になって子どもに怒ってしまったり、はたまた諦めて放っておく、などといったことが多いのではないでしょうか。このような対応では、「してほしくない行動」は減るどころかますますエスカレートしたり、あるいは反抗的になったり、親子関係そのものが悪くなってしまうでしょう。 「してほしくない行動」を目にすると怒りやイライラがつのり、親や家族自身もストレスを抱えます。また子どもも絶えず怒られる中でストレスを抱えることでしょう。単なる悪循環の繰り返しになってしまうことは少なくありません。
 ペアレントトレーニングは、ストレスや深刻な悩みを抱える家族を支援する方法の一つとして、アメリカ・UCLA神経精神医学研究所のハンス・ミラー博士によって1974年に開始されました。日本でもこの方法を改良した肥前方式、奈良方式、精研方式などといった日本版が実施されており、訓練を受けたトレーナーの指導の下で行われています。
ペアレントトレーニングは親が子どもの行動変容における心理やパターンを理解・分析し、問題行動を適切な対応で減少することのできる技術を獲得することを目的としています。全10回から構成されており、ADHDの基礎的学習から、分析を見据えた行動分類方法、具体的な対応の仕方を学んでいきます。その中でポイントとなるのは、「行動の分類化」「注目と無視」「トークンシステムとタイムアウト」です。

ペアレントトレーニングの基本的な考え方

・望ましくない行動は無視
・できない行動には手助け
・できるようになった行動はほめる
・千里の道も一歩から
・罰はできるだけ使わない

目標行動の例

○できるようになって欲しい行動
・回数を増やしたい行動
・できることを広げたい行動
・開発が望まれる行動

○ やめてほしい行動
・回数を減らしたい行動
・完全になくしたい行動
・適切な場面に限りたい行動

行動観察記録のポイント

目標にしている行動の観察記録
その行動が起こる前の状況の観察記録
その行動が起こった結果、周りがどのように対応したかの観察記録

前の状況→行動→結果

強化子とは

・子どもが好きなものや喜ぶもの、満足するもの。
・行動の結果得られるもの。

強化とは

・強化子を用いて、ある行動を増やすこと。

強化子探し 子どもがとても好きなもの、とても喜ぶことは何か?

例:食べ物→キョロちゃんのチョコレート、ラムネ菓子、ピカチュウのお茶漬け、たくあんなど
飲み物→スプライト、麦茶、牛乳など
遊 び→ブランコ、水遊び、カード集め、電気の点灯、コマまわしなど
品 物→ぬいぐるみ、ビー玉、コイン

言葉や態度などの関わり→「すごいっ」などの声かけ、かたぐるま、頭なで、握手、絵本の読み聞かせなど

強化子の種類

○一次性強化子(人にとって生まれつき強化子となるもの)
食べ物、飲み物、感覚刺激(ふれあい、スキンシップ)
○二次性強化子(経験によって強化子となるもの)
おもちゃ、シール、メディア、ほめ言葉、注目、遊びなど

望ましい行動を強化した例

不適切な行動を強化した例

強化子を用いる際のポイント

・強化子の効果を確認する
・子どもにとって何を強化されているかをわかるようにする
・誉め言葉や笑顔も忘れずに
・強化子をもらえる機会を増やす
・強化子の量は多すぎないように
・始めのうちは毎回強化する

プレマックの原理

普段あまり起こらない行動の直後に、いつもよく起こる行動が続くと、あまり起こらない行動が強化される
例:お手伝いをしたら、公園で遊んでいいよ
  宿題をしたら、テレビを見てもいいよ

トークン強化子

トークン:それ自体では価値はないが、価値のある実際の強化子と交換できる代用貨幣(グリーンスタンプ、ベルマークなど)
○高価な強化子を準備するときに有用
・ある行動が達成できたときにシール1枚,シールが何十枚になったら,
高価な強化子を買うと約束
・持ち運びが便利,いつでも,どこでも行動の直後に強化できる
○利点
・飽きにくい
・強化の間隔を自由に調節できる

困った行動を減らすには

→困った行動を強めているもの(強化子)を取り除いてやればよい。
困った行動を強めるもの
・注意を向けること
・関心を向けること
・叱責すること
・嫌いな活動(感覚・注目)から逃れる
・好きな活動(感覚)を得る
・体罰を与えること

要求・注意引きでしている行動は無視する

・無視は難しい
・無視をすると一時的に困った行動は増える
(例:自動販売機に硬貨を入れボタンを押したが無視された)

困った行動を上手に無視するためのチェックポイント

・体の不調や痛みの表現ではない
・親はわかりやすい指示を出している
・与えている課題は子どもにとってむずかしすぎない
・かまってもらいたいとき、要求があるときどのようにすればよいか、
伝えている
・注意引きや要求のために引き起こしている
→計画的な無視の開始

タイムアウトとタイムイン

○タイムアウト
@子どもが興奮して手がつけられなくなったとき頭を冷やす
A親がその場から立ち去る
B子どもを部屋の隅に腰かけさせる
C子どもを退屈な部屋に短時間おく

○タイムアウトの目的
・頭を冷やすこと(落ち着かせる)
・決して体罰でどこかに閉じ込めるのではないこと
・子どもを強化しているものから引き離す

○タイムアウトの手続き
@子どもの困った行動を1つだけ選択する
A問題行動があったとき,わかりやすい言葉で警告する
B数回の警告に従わないとき,タイムアウト室へと移動させる
C一定時間後タイムアウト室から連れ戻す(タイムイン)
D課題に返る/指示を与える

○タイムアウトに使う部屋
・危険なもの(ガラス、落下物)がなく、暴れても安全である
・子どもにとっての部屋(テレビ、窓の景色、おもちゃなど)がない
・もとの場所から一定の距離があり、外部の音が聞こえにくい
・暗いところや子どもが怖がる場所ではなく、できれば子どもに知られずに観察できる

○タイムイン
・タイムアウトの状態から子どもを連れ戻すこと
・タイムアウトを開始してから3分から5分間
・子どもが落ち着いてから30秒以内

環境の調整

・おやつを減らす(空腹にするために)
・おもちゃを片づける
・テレビを消す
・子どもが席を立ちにくくする

○飽和手続き
・子どもが興味をなくすまでさせる
・電気の点滅が好きな子に、1日だけ家中の電気の点滅を飽きるまでさせ続ける
・どこまでさせればいいのかの線引きが難しい

困った行動を減らすには - その時の様子を観察する

○レスポンスコスト
・子どもが得ている,ごほうびを減らす
・席を立てば,ごほうびのデザートがもらえない
・親を1回たたけば,引換券が1枚減る

・困った行動と合い入れない、認められる行動を身につけさせる
・要求・注意引きでしている場合は、無視する
・叱責や体罰はなるべく使わない
・「タイムアウト・タイムイン」を上手に使う
・環境を調整してみる

いろいろ試してみて、うまくいくやり方を採用する。

失敗したら、またやり直せばいい!!



軽度発達障害フォーラム

トップページ

LD 学習障害

PDD 広汎性発達障害

ADHD 注意欠陥多動性障害

発達障害に関わる情報

会議室

親の会・研究機関・相談機関

その他

 当サイトは学習障害,広範性発達障害,注意欠陥多動性障害等の情報を提供し、話し合う場になることを目的に 滋賀県健康福祉産業創出支援事業費助成金の助成を受け2002年に制作されました。
 現在「軽度発達障害」という言葉は障害の影響が軽度であるという誤解を受けるため、単に「発達障害」に改められましたが、当サイトではこのような経緯を理解しながらも、サイトの継続性を考えてこの名称を使っていることをご了承ください。、