LD 定義・診断基準

  文部省(現 文部科学省)による定義
文部科学省による判断基準など
DSM-W
ICD-10 研究用診断基準

文部科学省による判断基準など

■ 診断基準

 次の判断基準に基づき,原則としてチーム全員の了解に基づき判断を行う。

A.知的能力の評価
@全般的な知的発達の遅れがない。
・  個別式知能検査の結果から,全般的な知的発達の遅れがないことを確認する。
・  知的障害との境界付近の値を示すとともに,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論するのいずれかの学習の基礎的能力に特に著しい困難を示す場合は、その知的発達の遅れの程度や社会的適応性を考慮し,知的障害としての教育的対応が適当か,学習障害としての教育的対応が適当か判断する。

A認知能力のアンバランスがある。
・ 必要に応じ,複数の心理検査を実施し,対象児童生徒の認知能力にアンバランスがあることを確認するとともに,その特徴を把握する。

B.国語等の基礎能力の評価
○国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがある。
・ 校内委員会が提出した資料から,国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがあることと,その特徴を把握する。ただし,小学校高学年以降にあっては,基礎的能力の遅れが全般的な遅れにつながっていることがあるので留意する必要がある。
・ 国語等の基礎的能力の著しいアンバランスは,標準的な学力検査等の検査,調査により確認する。
・ 国語等について標準的な学力検査を実施している場合には,その学力偏差値と知能検査の結果の知能偏差値の差がマイナスで,その差が一定の標準偏差以上あることを確認する。

 なお,上記A及びBの評価の判断に必要な資料が得られていない場合は,不足の資料の再提出を校内委員会に求める。さらに必要に応じて,対象の児童生徒が在籍する学校での授業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。
また,下記のC及びDの評価及び判断にも十分配慮する。

C.医学的な評価
○学習障害の判断に当たっては,必要に応じて医学的な評価を受けることとする。
・ 主治医の診断書や意見書などが提出されている場合には,学習障害を発生させる可能性のある疾患や状態像が認められるかどうか検討する。
・ 胎生期周生期の状態,既往歴,生育歴あるいは検査結果から,中枢神経系機能障害(学習障害の原因となり得る状態像及びさらに重大な疾患)を疑う所見が見られた場合には,必要に応じて専門の医師又は医療機関に医学的評価を依頼する。
@収集された資料から,他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因ではないことを確認する。

D.他の障害や環境的要因が直接的原因でないことの判断
 校内委員会で収集した資料から,他の障害や環境的要因が学習困難の直接の原因であるとは説明できないことを確認する。
・ 判断に必要な資料が得られていない場合は,不足の資料の再提出を校内委員会に求めることとする。さらに再提出された資料によっても十分に判断できない場合には,必要に応じて,対象の児童生徒が在籍する学校での授業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。
A他の障害の診断をする場合には次の事項に留意する。
・ 注意欠陥多動障害や広汎性発達障害が学習上の困難の直接の原因である場合は学習障害ではないが,注意欠陥多動障害と学習障害が重複する場合があることや,― 部の広汎性発達障害と学習障害の近接性にかんがみて,注意欠陥多動障害や広汎性発達障害の診断があることのみで学習障害を否定せずに慎重な判断を行う必要がある。
・ 発達性言語障害,発達性協調運動障害と学習障害は重複して出現することがあり得ることに留意する必要がある。
・ 知的障害と学習障害は基本的には重複しないが,過去に知的障害と疑われたことがあることのみで学習障害を否定せず,「A.知的能力の評価」の基準により判断する。

■ 実態把握のための観点(試案)
@ 国語又は算数(数学)(以下「国語等」という。)の基礎的能力に著しい遅れがある。
・ 現在及び過去の学習の記録等から,国語等の評価の観点の中に,著しい遅れを示すものが1以上あることを確認する。この場合,著しい遅れとは,児童生徒の学年に応じ1〜2学年以上の遅れがあることを言う。
小学校2,3年生 1学年以上の遅れ
小学校4年生以上又は中学生 2学年以上の遅れ
A全般的な知的発達の遅れがない。
・ 知能検査等で全般的な知的発達の遅れがないこと,あるいは現在及び過去の学習の記録から,国語,算数(数学),理科,社会,生活(小学校1及び2年生),外国語(中学生)の教科の評価の観点で,学年相当の普通程度の能力を示すものが1以上あることを確認する。
・ 児童生徒の記録を検討し,学習困難が特殊教育の対象となる障害によるものではないこと,あるいは明らかに環境的な要因によるものではないことを確認する。
・ ただし,他の障害や環境的な要因による場合であっても,学習障害の判断基準に重複して該当する場合もあることに留意する。
・ 重複していると思われる場合は,その障害や環境等の状況などの資料により確認する。

■ 指導方法
A.
 従来の特殊教育の特徴は,教科の指導と並んで障害に基づく種々の困難の改善・克服を目指す自立活動の指導を行うことにある。これに対し,学習障害児に対する指導は,特定の能力の困難に起因する教科学習の遅れを補う教科の指導が中心となる。このため,学習障害とは別の理由により教科学習に遅れが見られる児童生徒に対する指導内容・方法と重複する部分も少なくなく,学習障害に特有の指導内容・方法を明確に示すことは現時点では困難である。ただし,反面これは,障害のない児童生徒に対する指導においても,学習障害児に対する指導内容・方法を広く活用することができるということも意味している。

B.
  また,従来の特殊教育においては,障害の種類や程度に応じた固有な指導内容・方法,あるいは指導形態があるが,学習障害児については,困難のある特定の能力の種類により指導方法等が異なることもあり,学習障害児に共通した一般的な指導方法は現時点では確立されていない。
さらに,同一の能力に困難を有していても,個々の学習障害児に生じている学習上のつまずきや困難などは様々であり,これらを改善するためには,個々の実態に応じた指導を行うことが必要である。
その際,個々の児童生徒の認知能力の特性に着目した指導内容・方法を工夫することが有効である。

C.
  具体的指導方法については,調査研究協力校や国立特殊教育総合研究所等における研究が参考となる。
  まず,調査研究協力校における研究では,学習障害児又はそれに類似した児童生徒に対する指導方法として,学習障害児等が興味・関心を持って授業に参加できるような指導や,達成感を持てるような指導が大きな効果を上げたことが報告されている。
具体的には,困難のある能力を補うための教材を用いた指導,スモールステップによる指導,自信をつけさせたりやる気を持たせることができる指導,同一の課題を繰り返して実施する根気・集中力を養う指導といった例が挙げられている。
  また,国立特殊教育総合研究所における研究では,児童生徒のつまずきに速やかに気付いて個に応じた指導をすることが可能なティームティーチングの活用や,集団の中では落ち着きがないため一斉指導では学習に集中できない児童生徒に対する個別指導が効果を上げたことが報告されている。
とりわけ,それぞれの児童生徒の認知能力の特性や学習の仕方に配慮して個別に指導計画を設け,苦手な分野の学習にも長所を生かせるような指導が重要であること,具体的には,
@ 教材の種類とその示し方,板書の仕方,ノートの取り方の指導などの工夫が大切であること。
A 読み書き計算と強い関係のある,文字,記号,図形の認知等に配慮した指導や手指の巧緻性を高める指導も有用であること。
B 「書くこと」や「計算すること」が特別に困難な場合には,ワープロやコンピュータあるいは電卓など本人が取り組みやすい機器等の併用が効果的であることが報告されている。

「学習障害児に対する指導について(報告)」(平成11年7月)より抜粋