ADHD - 定義・診断基準
文部科学省による判断基準など
判断基準
以下の基準に該当する場合は,教育的,心理学的,医学的な観点からの詳細な調査が必要である。
A.以下の「不注意」「多動性」「衝動性」に関する設問に該当する項目が多く、少なくともその状態が6ヶ月以上続いている。
○ 不注意
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学校での勉強で,細かいところまで注意を払わなかったり,不注意な間違いをしたりする。
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課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。
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面と向かって話しかけられているのに,聞いていないようにみえる。
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指示に従えず,また仕事を最後までやり遂げない。
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学習などの課題や活動を順序立てて行うことが難しい。
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気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避ける。
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学習などの課題や活動に必要な物をなくしてしまう。
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気が散りやすい。
・
日々の活動で忘れっぽい。
○ 多動性
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手足をそわそわ動かしたり,着席していてもじもじしたりする。
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授業中や座っているべき時に席を離れてしまう。
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きちんとしていなければならない時に,過度に走り回ったりよじ登ったりする。
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遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。
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じっとしていない。または何かに駆り立てられるように活動する。
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過度にしゃべる。
○ 衝動性
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質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
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順番を待つのが難しい。
・
他の人がしていることをさえぎったり,じゃましたりする。
B.「不注意」「多動性」「衝動性」のうちのいくつかが7歳以前に存在し、社会生活や学校生活を営む上で支障がある。
C.著しい不適応が学校や家庭などの複数の場面で認められる。
D.知的障害(軽度を除く)、自閉症などが認められない。
実態把握のための観点(試案)
A.基本方針
学校における実態把握については,担任教員等の気付きを促すことを目的とすることが重要である。
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障害種別を判断するためではなく,行動面や対人関係において特別な教育的支援の必要性を判断するための観点であることを認識する必要がある。
・
学校では,校内委員会を設置し,同委員会において,担任等の気付きや該当児童生徒に見られる様々な活動の実態を整理し,専門家チームで活用できるようにすることが求められる。専門家チームでは,このような学校における実態把握をも含めて,総合的に判断をすることになる。
B.留意事項
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ADHDや高機能自閉症等,障害の医学的診断は医師が行うものであるが,教員や保護者は,学校生活や家庭生活の中での状態を把握する必要がある。
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授業や学校生活において,実際に見られる様々な特徴を把握できるような観点を設定する必要がある。
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高機能自閉症等の一部には,行動としては現れにくい児童生徒の内面的な困難さもあることに留意する必要がある。
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授業等における担任の気付きを,注意集中困難,多動性,衝動性,対人関係,言葉の発達,興味・関心などの観点から,その状態や頻度について整理し,校内委員会に報告する。
C.観点
○ 知的発達の状況
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知的発達の遅れは認められず,全体的には極端に学力が低いことはない。
○ 教科指導における気付き
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本人の興味のある教科には熱心に参加するが,そうでない教科では退屈そうにみえる。
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本人の興味ある特定分野の知識は大人顔負けのものがある。
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こだわると本人が納得するまで時間をかけて作業等をすることがある。
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教師の話や指示を聞いていないようにみえる。
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学習のルールやその場面だけの約束ごとを理解できない。
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一つのことに興味があると,他の事が目に入らないようにみえる。
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場面や状況に関係ない発言をする。
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質問の意図とずれている発表(発言)がある。
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不注意な間違いをする。
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必要な物をよくなくす。
○ 行動上の気付き
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学級の児童生徒全体への一斉の指示だけでは行動に移せないことがある。
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離席がある,椅子をガタガタさせる等落ち着きがないようにみえる。
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順番を待つのが難しい。
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授業中に友達の邪魔をすることがある。
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他の児童生徒の発言や教師の話を遮るような発言がある。
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体育や図画工作・美術等に関する技能が苦手である。
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ルールのある競技やゲームは苦手のようにみえる。
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集団活動やグループでの学習を逸脱することがある。
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本人のこだわりのために,他の児童生徒の言動を許せないことがある。
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係活動や当番活動は教師や友達に促されてから行うことが多い。
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自分の持ち物等の整理整頓が難しく,机の周辺が散らかっている。
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準備や後片付けに時間がかかり手際が悪い。
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時間内で行動したり時間配分が適切にできない。
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掃除の仕方,衣服の選択や着脱などの基本的な日常生活の技能を習得していない。
○ コミュニケーションや言葉遣いにおける気付き
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会話が一方通行であったり,応答にならないことが多い。(自分から質問をしても,相手の回答を待たずに次の話題にいくことがある。)
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丁寧すぎる言葉遣い(場に合わない,友達どうしでも丁寧すぎる話し方)をする。
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周囲に理解できないような言葉の使い方をする。
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話し方に抑揚がなく,感情が伝わらないような話し方をする。
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場面や相手の感情,状況を理解しないで話すことがある。
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共感する動作(「うなずく」「身振り」「微笑む」等のジェスチャー)が少ない。
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人に含みのある言葉や嫌味を言われても,気付かないことがある。
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場や状況に関係なく,周囲の人が困惑するようなことを言うことがある。
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誰かに何かを伝える目的がなくても,場面に関係なく声を出すことや独り言が多い。
○ 対人関係における気付き
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友達より教師(大人)と関係をとることを好む。
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友達との関係の作り方が下手である。
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一人で遊ぶことや自分の興味で行動することがあるため,休み時間一緒に遊ぶ友達がいないようにみえる。
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口ゲンカ等,友達とのトラブルが多い。
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邪魔をする,相手をけなす等,友達から嫌われてしまうようなことをする。
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自分の知識をひけらかすような言動がある。
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自分が非難されると過剰に反応する。
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いじめを受けやすい。
A.基本的な考え方
<ADHDの指導・高機能自閉症等の指導共通>
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ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒の教育的ニーズは多様であることから,一人一人の実態把握を,単に行動上の問題の把握のみならず,教科学習や対人関係の形成の状況,学校生活への適応状況など様々な観点から行うことが必要である。
・
ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒の保護者,クラスメイト,クラスメイトの保護者への理解推進も積極的に進める必要がある。
・
ADHD・高機能自閉症等のある児童生徒に対して,個別の指導計画による指導が見られ,効果を上げている例も見られるが,当該児童生徒への一層の教育の充実ということから,その作成にあたっては,通級指導教室や特殊学級など校内の特殊教育の担当者からの支援を得ることが望ましい。個別の指導計画を作成し,運用するに当たっては,保護者への十分な理解と連携が求められる。個別の指導計画の作成や運用の在り方については,研究開発学校における取り組みの成果等を参考に検討することが考えられる。
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知的発達には遅れがないものの学習面や行動面で様々な状態を示し,社会的適応にも困難を示すことがあることから,生徒によっては中等教育段階の早い時期から,障害の特性に配慮した職業に関する教育が必要である。
<ADHDの指導>
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多動行動等に対応するためには,小学生など低年齢段階からの適切な指導が重要である。
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生活技能(主として対人関係技能)を身に付けることが大切である。その際には,適切な行動に向けての自己管理能力を高めることも大切である。
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問題行動,非行等への配慮が必要である。
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自信回復や自尊心(自己有能感)の確立,さらには自分で自分の行動を振り返ったり,他者が自分をどうとらえているのかを理解したりすることも大切である。
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投薬(中枢刺激剤等)の効果が認められる場合があることから,医療との連携が重要である。
B.具体的な配慮
<ADHDの指導・高機能自閉症等の指導共通>
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共感的理解の態度をもち,児童生徒の長所や良さを見つけ,それを大切にした対応を図る。
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社会生活を営む上で必要な様々な技能を高める(ソーシャルスキルトレーニング)。それらは,ゲーム,競技,ロールプレイ等による方法が有効である。
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短い言葉で個別的な指示をする(受け入れやすい情報提示,具体的で理解しやすい情報提示)。
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いじめ,不登校などに対応する。
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本人自らが障害の行動特性を理解し,その中で課題とその可能な解決法,目標を持つなど対処方法を編み出すよう支援する。
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校内の支援体制を整える。
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周囲の子どもへの理解と配慮を推進する。
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通級指導教室での自信と意欲の回復を図る(スモールステップでの指導等による)。
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通級指導教室担当者は,在籍学級担任への児童生徒の実態や学習・行動の状況等に関する情報提供や助言をする。
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医療機関と連携する。
<ADHDの指導>
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叱責よりは,できたことを褒める対応をする。
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問題行動への対応では,行動観察から出現の傾向・共通性・メッセージを読み取る。
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不適応をおこしている行動については,その児童生徒と一緒に解決の約束を決め,自力ですることと支援が必要な部分を明確にしておく。
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グループ活動でのメンバー構成に配慮する。
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刺激の少ない学習環境(机の位置)を設定する。
※ 上記の具体的な配慮は,すべての年齢層に共通というわけではなく,年齢によって,異なることに注意する必要がある。また,同年齢であっても,個々の状態に応じて配慮事項は変わることに注意する必要がある。
※ また,いくつかの指導実践では,通常の学級で可能な配慮と,通級指導教室等における配慮が有効な場合もあることが報告されている。
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